かつての銘機をリファインして復活
ベリリウムカンチレバー、マイクロリッジ針、1.0Ω発電系へ大幅に磨き直した限定再生産モデル
かつてのYC-03Sを、現行仕様へ磨き直した限定再生産モデル
YC-03Sは、かつてラインアップされていた低インピーダンスMCカートリッジを、現行仕様へ大幅にリファインして限定再生産したモデルです。

旧YC-03Sは、一部の部品・素材の入手が困難になったことにより製造を終えていました。今回の限定再生産モデルでは、黒檀ボディという核となる設計思想を受け継ぎながら、発電系、カンチレバー、スタイラス、テンションワイヤー、内部配線などを現行仕様として見直しています。
単なる復刻ではなく、かつてのYC-03Sが持っていた力強く実在感のある再生を、現在の仕様で再構築したリバイバルモデルです。
黒檀ボディを核にした振動制御
ボディには、アフリカ黒檀材を採用しています。黒檀は、同社製品を象徴してきた素材のひとつであり、カートリッジにおいても、針先から伝わる微細な振動を自然に受け止める重要な要素となります。
金属ボディのような鋭い響きに寄せるのではなく、木材ならではの適度な内部損失を活かし、音の芯と自然な質感を両立する方向の設計です。針カバーにも同じ黒檀材を用い、外観上の統一感も高められています。
1.0Ωの低インピーダンスMC発電系
発電方式には、安定した性能が得られるオルトフォンタイプを採用しています。現行のYC-03Sでは、内部インピーダンスを旧モデルの1.2Ωから1.0Ωへ低くし、出力電圧は0.2mVに設定されています。
低インピーダンスMCとして、単に繊細さだけを追うのではなく、発電されるエネルギーの密度、音の押し出し、実在感を重視した設計です。低出力ながら、音楽の芯をしっかりと描くことを狙っています。
ソリッドベリリウムカンチレバーとマイクロリッジスタイラス
旧YC-03Sでは0.26mmソリッドボロンカンチレバーとラインコンタクト針を採用していましたが、限定再生産モデルでは0.35mmソリッドベリリウムカンチレバーとマイクロリッジスタイラスへ変更されています。

ベリリウムカンチレバーは、強靭さと軽さを両立する素材です。マイクロリッジスタイラスとの組み合わせにより、レコード溝に刻まれた微細な情報を丁寧に拾い上げ、音の立ち上がり、余韻、空間の見通しを高めます。
情報量を高めながらも、音を細くまとめるのではなく、黒檀ボディと低インピーダンス発電系によって、密度と力感を伴った再生を目指しています。
0.12mm径テンションワイヤーによる腰の強さ
YC-03Sの大きな特徴のひとつが、カートリッジ内部のテンションワイヤーです。テンションワイヤーは、カンチレバー、発電コイル、磁気回路を結合する振動系の中心に位置する重要な部材です。

一般的なカートリッジでは0.06mm〜0.08mm径程度のピアノ線が使われることが多いのに対し、現行YC-03Sでは0.12mm径のピアノ線を採用しています。旧モデルの0.14mm径からは見直されていますが、現在でも一般的な仕様と比べて太いテンションワイヤーです。
細いテンションワイヤーは高コンプライアンス化しやすく、高域方向の伸びを得やすい一方で、音のエネルギー感が弱くなる傾向があります。YC-03Sでは、あえて太めのテンションワイヤーを採用することで、腰の強さ、音の芯、力強い実在感を重視しています。
0.6mm径6N銅線による内部配線
MCカートリッジ内部では、発電コイルからターミナルまでのわずかな配線であっても、音質に大きく影響します。YC-03Sでは、コイルの近くまで0.6mm径の6N銅線を配線しています。
コイルから出る極細の巻線に対し、0.6mm径の6N銅線は非常に大きな断面積を持ちます。わずかな内部配線にも手を抜かず、発電された信号のエネルギーをできるだけ損なわずに伝えることを狙った設計です。
スーパージュラルミン製ベースプレートによる取り付け剛性
ボディ下部には、スーパージュラルミン製のベースプレートを装着しています。内部の磁気回路などの金属部分を間接的に補強し、カートリッジ全体の剛性を高める構造です。

ヘッドシェルへ取り付けた際には、このベースプレートがシェルと直接接触し、取り付け部を補強します。黒檀ボディの自然な響きと、金属プレートによる剛性を組み合わせることで、力強く引き締まった再生を目指しています。
復刻ではなく、再構築されたYC-03S
YC-03Sは、旧モデルの名前と基本思想を受け継ぎながら、主要な仕様を大きく見直した限定再生産モデルです。
ソリッドボロンからソリッドベリリウムへ、ラインコンタクト針からマイクロリッジスタイラスへ、1.2Ωから1.0Ωの低インピーダンス発電系へ。さらに、現行資料で明記されている0.12mm径テンションワイヤーと0.6mm径6N銅内部配線により、振動系と信号経路の両面から、情報量、力感、実在感を磨き直しています。
繊細な情報を拾い上げながら、音を細くせず、音楽の芯と密度をしっかりと描く。YC-03Sは、アナログディスクに刻まれたエネルギーを、力強く実在感をもって引き出すMCカートリッジです。
| 型式 | 低インピーダンスMCカートリッジ |
|---|---|
| 出力電圧 | 0.2mV / 1kHz, 5cm/sec. |
| チャンネルセパレーション | 25dB以上 / 1kHz |
| チャンネルバランス | 1dB以下 / 1kHz |
| カンチレバー | 0.35φmm ソリッドベリリウム |
| スタイラスチップ | マイクロリッジスタイラス |
| インピーダンス | 1.0Ω |
| コンプライアンス | 7×10^-6 cm/dyn |
| 適正針圧 | 1.5〜2.0g |
| 周波数特性 | 20Hz〜20,000Hz |
| ボディ | アフリカ黒檀材 / エコ塗料仕上げ |
| 外形寸法 | 18mm(W) × 30mm(L) × 15mm(H) |
| 自重 | 9.3g / 本体のみ |
| 付属品 | 真鍮製金メッキ取り付けボルト、ナット |
| 針交換 | 本体交換方式 |
リファイン内容と音質傾向
限定再生産モデルのYC-03Sは、旧モデルの単純な復刻ではありません。黒檀ボディを核とする設計思想は継承しながら、カンチレバー、スタイラス、発電系、テンションワイヤー、内部配線を中心に大きく見直されています。
旧モデルの0.26mmソリッドボロン/ラインコンタクト針に対し、現行仕様では0.35mmソリッドベリリウム/マイクロリッジスタイラスを採用。より細かな情報を拾い上げながら、音の立ち上がりと余韻を明確に描く方向へ進化しています。
発電系は1.0Ωの低インピーダンス仕様。出力電圧は0.2mVと低めですが、発電エネルギーの密度と力感を重視した設計です。繊細で細身な方向ではなく、音の芯、押し出し、実在感を重視したMCカートリッジといえます。
0.12mm径テンションワイヤーは、音の腰と力強さを支える重要な要素です。さらに0.6mm径6N銅内部配線により、振動系と信号経路の両面から、音の芯、力感、実在感を重視した設計となっています。
YC-03Sは、柔らかい雰囲気だけで聴かせる木製ボディMCではありません。黒檀ボディの自然な響きに、低インピーダンスMCらしいエネルギー感、ベリリウムカンチレバーとマイクロリッジスタイラスによる高い情報量を組み合わせた、個性の明確なカートリッジです。









