山本音響工芸 HA-03
真空管式ヘッドフォン/スピーカーアンプ

C3m単段無帰還回路。真空管の魅力を最大限に引き出し、最良の音質でヘッドフォンもスピーカーも駆動

HA−03 は、ヘッドフォンもスピーカーも最良の音質で楽しめることを目指して設計されたユニークなアンプです。回路構成を極限まで簡素化し、真空管の持つ魅力を最大限に引き出しました。

シンプルだからこそ音が新鮮、音楽が楽しめる

• 真空管C3m単段増幅: ドイツ・シーメンス社製ビンテージ真空管の五極管 C3m を五極管接続で一段だけ使用した極めてシンプルな構成です。
• 負帰還不使用（無帰還方式）: 最もシンプルで自然な無帰還方式を採用。負帰還（NFB）を使わず、回路通過部品の数を極限まで減らすことで、音の劣化を最小限に抑えています。シンプルだからこそ、音が新鮮で音楽の楽しさが際立ちます。
• 高出力化: スクリーングリッド回路とプレート回路を別電源とし、スクリーングリッド回路を定電圧化することで、スピーカー負荷で約 1W という実用的な出力を得ています。

1W出力の実力と幅広い対応力

• 最大出力: ヘッドフォン負荷で 1.4W、スピーカー負荷で 1.0W の出力を達成しています。
• 真空管アンプの迫力: 1Wという出力は小さいと感じられるかもしれませんが、真空管アンプの出力は半導体アンプの数倍の出力と同等の迫力があるといわれています。
• ある程度能率が高いスピーカー（特にブックシェルフ型小型スピーカー）であれば、密度の高い高品質な音を中程度の音量まで満足いくサウンドで堪能できます。
• ヘッドフォン対応: 16Ω から 200Ω くらいまでの広範囲なインピーダンスのヘッドフォンに対応可能です。

高音質部材の厳選使用

• シャシー: 高絶縁・高強度なフェノール樹脂強化木材を採用し、高音質化に寄与しています。
• 電源トランス: 大型のアールコアトランスを採用。
• 抵抗器: 米国 DALE 社製巻き線抵抗を使用するなど、世界各国から高音質部材を厳選しています。

Spec

サラリとした質感と明瞭な輪郭

HA-03 の音は、真空管アンプでありながら過度な色付けがなく、サラリとした質感が印象的だ。その一方で、音の凹凸はくっきりとしており、輪郭がにじむことはない。レンジを誇張して広く見せるタイプではないが、音像は明るく鮮やかで、情報が整理された再現性を持っている。

ヘッドフォン再生で際立つ陰影表現

ヘッドフォン再生では、音の陰影が豊かに描き分けられる。細部のニュアンスが埋もれず、音の立体感が自然に浮かび上がる印象だ。SENNHEISER HD-650 を使用した場合でも駆動に不足は感じられず、音が窮屈になることなく、十分な鳴り方を示す。対応力は高く、特定のヘッドフォンを選ばずに使いやすい点も魅力だろう。

ピアノとジャズで感じる密度感

ピアノ再生では、タッチが明確で、芯のある厚みが感じられる。アタックが曖昧にならず、鍵盤の動きが手に取るように伝わる。一方、ジャズでは意外性のある低音表現が印象的で、量感を誇示するわけではないが、ずっしりとした手応えがあり、リズムの土台が安定する。

スピーカー再生でも共通するキャラクター

スピーカー再生においても基本的な音調は変わらず、密度の高い質感が楽しめる。大音量で鳴らすタイプではないが、ブックシェルフ型スピーカーを小空間で使用するのであれば、無理のない自然な再生が可能だ。音が粗くならず、落ち着いた音楽表現を保つ点が好ましい。

真空管らしさと実用性のバランス

HA-03 は、真空管アンプの柔らかさや雰囲気を前面に押し出すモデルではない。むしろ、明瞭さと密度感を重視し、ヘッドフォン／スピーカーの両方で安定した再現性を狙った設計と言える。派手さはないが、長く付き合える質感と汎用性を備えた一台だ。