微小なMC信号の細部まで余さず引き出す
超低出力・低インピーダンスMCに捧げる、固定構造の専用設計
ごく出力の小さいMCは、本当は鳴らすのが難しい
微小な信号に宿る繊細さ、空気感、温度——ごく出力の小さいMCカートリッジが愛される理由は数えきれません。けれど、その実力を引き出すのは簡単ではありません。出力が小さいほど多くのゲインが必要になり、フォノイコでゲインを稼げばノイズも一緒に増えていく。せっかくの繊細な表情が、サーッというノイズや痩せた音に埋もれてしまう——そんな経験はないでしょうか。DECVSは、まさにこの「ごく出力の小さいMCをどう鳴らすか」という難題のためだけに設計された、専用の昇圧トランスです。
■ "なんでも一台"ではなく、"これ一台に専念"
多くのトランスは、いろいろなカートリッジに対応できるよう切り替えスイッチや複数の経路を備えます。便利な反面、そこには必ず妥協が生まれます。DECVSはその逆を行きます。切り替えを一切持たず、とりわけ出力が小さく低インピーダンスなMCだけに狙いを定めた固定構造。動作条件を一点に決め切ることで、最短・最純の信号経路と、揺るぎない基準(リファレンス)動作を実現しています。

フルバランスが生む、漆黒の静寂と密度
DECVSは、各信号位相に独立したトランスを使用し、シールド、グラウンド処理、機械構造までを一体として設計。単に高い昇圧比を得るだけではなく、微小信号を外部ノイズから守りながら正確に伝送するための、徹底した構造です。選別されたトランス・ペアがフルバランスで動作することで、ノイズやハムが互いに打ち消し合い、音楽は漆黒の静寂の中から立ち上がります。左右の独立性も高く(チャンネルセパレーション80dB以上)、各楽器の位置が手に取るように分かれ、音場の見通しが冴えわたります。1:36という高い昇圧比が、微小なMC信号を余裕を持って持ち上げ、痩せやストレスのない、密度のある音像を描き出します。出力はRCAとXLRの両方に対応。お使いのフォノイコへ柔軟につなげ、バランス機ならXLRでさらに一歩踏み込めます。
揺るぎない土台:剛性シャシーとグラウンディング
微小信号を扱うトランスにとって、機械的にも電気的にも"静かである"ことは命です。DECVSは剛性の高いスチール・シャシーで振動を抑え込み、同時に磁気シールドとしても働きます。さらにアイソレーテッド・グラウンドとグラウンドリフト機構を備え、機器が増えた複雑なシステムでもグラウンドループを丁寧に管理。コンパクトなFUCHSプラットフォーム上に、これらが過不足なく凝縮されています。

こんな方に
ごく出力の小さい(目安として0.2mV前後以下の)MCを愛用している方、フォノイコのゲイン不足やノイズに悩んでいる方、そして「一台で何でも」より「この役割を完璧に」を選びたい方に最適です。すでに満足度の高いアナログ環境をお持ちの方ほど、静けさと密度の違いをはっきり感じ取っていただけるはずです。

主な特徴
- ごく出力の小さいMC専用設計:低インピーダンスのカートリッジに用途を絞り、妥協のない固定構造で安定した性能を発揮します。
- 1:36の高い昇圧比:微小なMC信号を余裕を持って持ち上げ、痩せやストレスのない音像にします。
- 優れたチャンネルセパレーション(80dB以上):左右をくっきりと分離し、定位の明確さと音場の見通しを高めます。
- フルバランス&フローティングRCA入力:入力段から差動伝送し、ノイズを抑えた漆黒の静寂を実現します。
- RCA/XLRの両出力:アンバランス・バランスどちらのフォノイコにも柔軟に対応します。
- 剛性スチール・シャシー:振動を抑え、磁気シールドとしても機能。微小信号を外乱から守ります。
- アイソレーテッド・グラウンディング:グラウンドリフト機構でグラウンドループを管理し、静けさを底上げします。

設置上のポイント:高い昇圧比を持つため、電源トランスやACアダプターなど、強い磁界を発生する機器から距離を取って設置してください。設置場所を適切に選ぶことで、極めて静かな動作が得られます。
| タイプ | 超低出力・低インピーダンスMC専用 昇圧トランス(完全バランス) |
|---|---|
| 構造 | マッチド・トランスペアによるフルバランス固定構造(切り替えなし) |
| トランスコア | スーパーパーマロイ(タムラ製) |
| 昇圧比 | 1:36 |
| 入力インピーダンス | 0–4Ω |
| 出力インピーダンス | 4kΩ |
| 周波数特性 | 10Hz–100kHz(±1.0dB) |
| チャンネルセパレーション | 80dB以上(20Hz–50kHz) |
| 位相特性 | 10°以内(20Hz–50kHz) |
| 入力端子 | RCA(フローティング入力段) |
| 出力端子 | RCA/XLR |
| グラウンディング | アイソレーテッド・シャシーグラウンド(グラウンドリフト機構付き) |
| シャシー | 剛性スチール(FUCHSプラットフォーム) |
| 外形寸法(W×D×H) | 155 × 215 × 70 mm |
| 重量 | 2.1kg |
| 適合カートリッジ | 超低出力・低インピーダンスMC |
海外レビュー:LP Magazin ― 超低出力MCの魅力を静かに、滑らかに引き出す
ドイツのアナログ専門誌『LP Magazin』は、Fonolab DECVSを超低出力MCカートリッジのための本格的な専用機としてテストしています。RCA入力を含めて信号を完全なバランス構成で扱う設計にも注目しています。試聴には公称出力0.1mVのSculpture A MC 5.3を使用。DECVSの約31dBの昇圧と一般的なMMフォノイコのゲインを組み合わせることで、超低出力MCを無理なく扱える十分な増幅量が得られたと報告しています。
■ 0.1mV級のMCを適正なレベルまで昇圧
公称出力0.1mVという極めて出力の小さいカートリッジでも、DECVSを通すことで約3.6mVまで昇圧され、後段のMMフォノイコにとって扱いやすい信号レベルになります。また、47kΩのMM入力に接続した場合、カートリッジ側から見た負荷は約36Ωとなり、低インピーダンス・低出力MCに適した動作条件が得られると評価されています。
■ ノイズを意識させない、静かで自然な再生
レビューでは、これほど高い昇圧量を持つにもかかわらず、適切に設置すればノイズは問題にならず、非常に静かな背景が得られたとされています。音質は滑らかでエレガント、それでいてダイレクト。音を柔らかく整えるだけではなく、楽器の勢いや演奏の緊張感まで損なわずに伝える点が高く評価されました。
■ 滑らかさと鮮烈さを両立した音楽表現
Pink Floydではギターのイントロが強い存在感と美しさを伴って再現され、Rickie Lee Jonesでは歌声と演奏の感情的な深さを明瞭に描写。Chuck Mangioneの力強い管楽器では、輝きと滑らかさが自然に両立し、引っ掛かりや刺激感を生じさせることなく、楽曲の爆発的なダイナミクスを説得力豊かに再現したと評されています。
■ 完全バランス構造を徹底した内部設計
『LP Magazin』は、であると紹介されています。
■ レビュー総評
『LP Magazin』はDECVSについて、出力電圧の極めて小さいMCカートリッジに適した優れた昇圧トランスであり、取り扱いやすく、音質は非常に滑らかで、ダイレクトかつ自然にまとまっていると結論づけています。超低出力MCならではの繊細さを保ちながら、音楽の密度、躍動感、感情表現まで引き出す点が、特に高く評価されています。









