小さなアリアが、空間を鮮やかに描く
透明感と躍動感を凝縮した、フィデリックス初の本格2ウェイスピーカー
Fidelix ARIETTA — 音楽の輪郭と余韻を、澄み切った姿で描く
ARIETTAは、フォノEQ、DAC、プリアンプ、パワーアンプなど、精密な電子回路機器で知られるフィデリックスが手がけた初の本格スピーカーシステムです。
製品名の「ARIETTA」は、イタリア語で“小さなアリア”を意味する言葉。コンパクトなサイズでありながら、音楽の表情、旋律の動き、楽器の質感を明瞭に描き出すことを目指して設計されています。
小型2ウェイでありながら、単なるデスクトップスピーカーに留まらない完成度を追求。音の濁りを抑え、立ち上がりの速さ、定位の正確さ、そして音楽的な自然さを高い次元で両立しています。
希少なマイラー振動板ツイーターが生む、透明感と艶
ARIETTAの音づくりの中心にあるのが、ショートホーン付きのマイラー振動板ツイーターです。
近年ではマイラー振動板のツイーターは少数派となっていますが、その滑らかで艶のある高域表現は大きな魅力です。フィデリックスは、このユニットが持つ透明感と質感に着目し、ARIETTAの高域再生の核として採用しました。
さらに、ツイーター前面のイコライザーを取り外すことで音のにじみを抑え、必要な高域の伸びはネットワーク回路側で丁寧に補正。素材の個性を活かしながら、癖や曇りを抑えた、自然で鮮度の高い高域再生を実現しています。

MOREL CAW538ウーファーによる、俊敏で正確な低域
低域には、イスラエル製MOREL CAW538を採用。127mm口径のポリプロピレン振動板を備えたウーファーで、ボイスコイル径はこのサイズとしては非常に大きな75mm。小型スピーカーでありながら、力強く、反応の速い低域再生を可能にしています。
フィデリックスは、このウーファーの駆動力をより正確に引き出すため、ユニット背面にφ12mmの鉄棒を追加し、バックパネルに強固に連結。ユニット自体の不要な揺れを抑え、振動板の動きをより明瞭に音へ変換します。
この構造により、エンクロージャー全体の剛性が高まり、音像のにじみや不要な付帯音を抑制。小型ながら、音の芯がはっきりと立ち上がる再生を実現しています。

特殊ダンプドバスレフ構造による、締まりと伸びの両立
ARIETTAは、一般的なバスレフ型ではなく、低域の膨らみや過剰な共鳴を抑えた「特殊ダンプドバスレフ」方式を採用しています。
リア側のバスレフポートには、開口部の背後からの影響を受けにくくするため、赤い円錐形ディフューザーを装備。ポートから発生する不要な反射や癖を抑え、低域のピッチ感と立ち上がりをより明確にします。
単に低音の量を増やすのではなく、音楽のリズムやベースラインを正確に描くための低域設計です。小型スピーカーにありがちな膨らみや曖昧さを抑え、制動の効いた低域を得ています。
フィンランドバーチ合板と独自補強による、高剛性キャビネット
エンクロージャー素材には、高剛性で響きの良いフィンランドバーチ合板を採用。塗装は高耐久で高級感のあるウレタン光沢仕上げです。
内部には、左右の側板をつなぐ補強材を配置し、箱鳴きを効果的に抑制。さらに、その補強材に最小限の吸音材を巻くことで、縦方向の定在波をピンポイントで処理しています。
大量の吸音材で音を殺すのではなく、必要な響きは残しながら不要な濁りだけを抑える構造です。これにより、オーバーダンプにならず、音楽の表情を生き生きと再現することができます。
音質最優先で構成されたクロスオーバーネットワーク
クロスオーバー周波数は5kHzに設定。マイラー振動板ツイーターの質感を活かしながら、MORELウーファーとの自然なつながりを実現しています。
ネットワーク基板には3mm厚のガラスエポキシPCBを採用し、主要パーツを直接ハンダ付けすることで接触不良のリスクを低減。空芯コイル、タクマン電子の金属皮膜抵抗、PPSフィルムコンデンサーなど、音質に配慮した高品位パーツを惜しみなく投入しています。
入力端子はバイワイヤリング接続に対応。さらに、リアパネルにはツイーターレベルを±1.5dBの範囲で調整できるトグルスイッチを装備しており、部屋の響きや使用機器、好みに合わせた微調整が可能です。
専用スピーカースタンドで、さらに正確な音場へ
ARIETTAの能力を最大限に引き出すには、適切な高さと安定性を確保するスタンドの使用がおすすめです。
専用スタンドは高さ約600mmで設計され、リスニング時にツイーター位置を耳の高さへ合わせやすい構造です。鉄板をサンドイッチした重量級構造により、片側約10kgの質量を確保。下部にはセラミックインシュレーターを採用し、床からの不要振動を抑えます。
スピーカーとスタンドの間には約30mmの空間を設け、強固な袋ナットで支える構造により、不要な共振を抑えながら、ARIETTA本来のスピード感と音場表現を引き出します。
小型スピーカーの枠を超える、明瞭で音楽的な表現
ARIETTAの魅力は、単に高解像度なだけではありません。音の立ち上がりが速く、低域は過度に膨らまず、ボーカルや楽器の芯が明瞭に浮かび上がります。
マイラー振動板ツイーターによる透明感のある高域、MORELウーファーによる俊敏な低域、そしてフィデリックスならではの徹底した振動制御。これらが一体となることで、録音に込められたニュアンスや空間の奥行きを、自然なバランスで描き出します。
ニアフィールドから中距離リスニングまで、音像のピントが合いやすく、アンプやソース機器の個性も素直に反映。小型で扱いやすく、それでいて音楽の本質に深く踏み込めるスピーカーです。
| 形式 | 2ウェイ特殊ダンプドバスレフ型 |
|---|---|
| クロスオーバー周波数 | 5kHz |
| インピーダンス | 8Ω |
| 能率 | 83dB / 2.83V / 1m |
| 最大入力 | 40W |
| 周波数特性 | 45Hz〜20kHz以上 / -10dB |
| 寸法 | 184mm(W) × 300mm(H) × 214mm(D) |
| 重量 | 5kg |
| ウーファー | 127mm径ポリプロピレン振動板 / ボイスコイル直径75mm |
| ツイーター | マイラー振動板 / ショートホーン付き |
| 入力端子 | バイワイヤリング対応 / ツイーターレベル調整スイッチ装備 |
| 線材 | モガミ電線2515 ポリエチレン被覆OFC線 |
MJ誌 SOUND CHECKより — 躍動感のある演奏が展開される
MJ誌の試聴では、ARIETTAについて「小口径ウーファーならではの限界はあるものの、コントラバスの最低音付近まで音域が確保され、質感や胴鳴りも正確に再現される」と評されています。
特に印象的なのは、低域のチューニングの巧みさです。低くチューニングされたキックドラムは適度なタイトさを保ち、軽快に立ち上がって正確に制動。シンバルの鮮烈さ、トロンボーンのスリリングな掛け合い、ピアノトリオの前後感や定位も明瞭に描かれると紹介されています。
また、古いアナログ音源の再生では、鮮度の高い響きや弦楽器の繊細な艶が得られると評価。単なる小型スピーカーではなく、音源の状態や録音の空気感まで見通せる、完成度の高い日本製スピーカーシステムとして好意的に取り上げられています。
音楽的な表現がよくわかる鳴り方
別の試聴評では、ARIETTAはニアフィールド的な聴き方に適しており、比較的近い距離で聴くことで音場の奥行きや左右の広がりがよくわかるとされています。
バロック音楽では、ユニットの一体感が高く、ピントの合った音場が奥へ伸び、立ち上がりの速さと余計な響きの少なさが際立つと評価。艶やかで繊細な古楽器の音色も濁りなく引き出されるとされています。
ピアノでは、聴取位置を適切に合わせることで焦点が合い、音楽が小気味よく決まると紹介されています。過剰な余韻や強調感に頼らず、明瞭で密度の高い表現が得られる点もARIETTAの大きな魅力です。
オーケストラでは、楽器の音色が多彩かつ鮮明に描かれ、空間の奥行きや遠近感も明瞭。立ち上がりが速く、エネルギー感もありながら、デリケートな表情まで丁寧に描き出すスピーカーとして評価されています。
ARIETTAが目指す音
ARIETTAは、低域を誇張して大きく見せるタイプのスピーカーではありません。むしろ、音楽の芯、立ち上がり、余韻、空間の見通しを丁寧に整え、録音に含まれる情報を過不足なく引き出すタイプです。
コンパクトなサイズでありながら、音像の定位、低域の制動、高域の透明感、そして音楽的な躍動感を高いバランスでまとめ上げた、フィデリックスらしい理知的で完成度の高いスピーカーシステムです。









