山本音響工芸 CA-03 真空管フォノイコ内蔵プリアンプ

Telefunken 6AK5W 採用。 58dBハイゲインフォノイコライザーが引き出すアナログの真価

CA−03は、ラインアンプとフォノイコライザーを内蔵した多機能な真空管式プリアンプです。両回路にわたり、徹底したノイズ対策と独自の回路設計を施すことで、高情報量かつクリアなサウンドを実現しています。

ハイゲイン・フォノイコライザー部（MC 直結対応）

• 超ハイゲイン 58dB: イコライザーアンプの利得は 1kHz で**58dB** のハイゲイン設定。通常の34dB設定に比べ、24dBも大きい利得を獲得しています。
• 超低ノイズ 110dB: ノイズを 2.3mVに抑えることで、S/N 比110dBを達成。 CR型回路構成でありながら、大きな利得の獲得とノイズの低下を両立させました。
• MC 直結による鮮度向上: 最大出力約28Vを持ち、同社のYC−03S（出力 0.25mV）などの MCカートリッジを昇圧トランスなしで直接接続可能なレベルです。昇圧トランスを通さない MC サウンドは鮮度が高く情報量が大幅に向上します。
• シンプル回路: ゲインは2個の真空管のみで得ているため、情報量の欠如がありません。

徹底した電源回路の分離

• 独立電源供給: 電源のリップルフィルターを各ステージそれぞれに別個に整流回路から分割し、それぞれのステージを独立した電源から供給します。整流回路は両波整流を採用し、レギュレーションを向上させています。
• 独立ヒーター点火: 6本の真空管 Telefunken 6AK5W のヒーター点火は、それぞれに独立した整流回路を設けることで、互いの真空管の干渉を徹底的になくしました。

ラインアンプ部スペック

CA−03 のラインアンプ部は、真空管の持つ魅力を引き出し、システムの中心として高品位な信号増幅を行います。

《ラインアンプ部》

《イコライザーアンプ部》

フォノ再生の質感を重視した一体型設計

CA-03は、真空管式ラインアンプにフォノイコライザーを内蔵したモデルで、アナログ再生を主軸に据えた構成が特徴だ。フォノイコ部は、音の情報を丁寧にすくい上げる方向性で、派手さよりも自然さを重視した音調を持つ。

滑らかで耳当たりの良い音色

再生音は全体に穏やかで、真空管らしい滑らかさが感じられる。中域はふくよかで、ボーカルや弦楽器の質感が自然に整う。いわゆる過度なウォームさや甘さは控えめで、音の輪郭がにじまず、落ち着いた表現が得られる点が印象的だ。

静かな背景と安定したS/N

真空管式フォノイコ内蔵機でありながら、背景は比較的静かで、ハムノイズやざらつきが抑えられている。音が静寂の中から立ち上がり、余韻が自然に伸びていくため、レコード再生に集中しやすい。古い盤でも音楽の骨格が崩れにくいという評価が見られる。

音場表現と定位

音場は無理に広げる方向ではなく、実在感のある広がりと奥行きを持つ。楽器やボーカルの定位は安定しており、アンサンブルやオーケストラでも各パートの重なりが整理されて聴こえる。フォノイコ内蔵機としては見通しの良い音場形成が特徴とされている。

ラインアンプ部の素直さ

ライン入力再生でも音色の統一感は崩れず、フォノ再生と同様に癖の少ない自然な音調を維持する。接続するパワーアンプの個性を大きく変えることなく、システム全体を穏やかにまとめる役割を果たす。

CA-03は、真空管フォノイコ内蔵プリアンプとして、アナログ再生に必要な滑らかさ、静けさ、安定感をバランス良く備えたモデルである。派手な演出を避け、レコードの持つ音楽性を自然に引き出す方向性は、長時間のリスニングにも適している。アナログ再生を中心としたシステムをシンプルに構築したいユーザーに向いた一台と言える。