世界の音づくりを耳元へ。新たに始まるヘッドフォン・イヤホンの世界
音楽を深く楽に入ることができる。ヘッドフォンやイヤホンには、スピーカーとは異なる魅力があります。音楽との距離が近く、演奏者の息づかい、楽器の微細な倍音、録音空間に残された余韻まで、耳元で直接確かめられることも大きな特徴です。
このたびExAUDIOでは、世界各地で独自の製品づくりを続けるブランドのヘッドフォンおよびイヤホンを、新たに取り扱い始めました。
今回選んだのは、単に知名度の高いブランドや、スペックの数字だけで目を引く製品ではありません。それぞれの国や工房に根ざした設計思想があり、「音をどのように生み出し、どのように耳へ届けるのか」という問いに対して、明確な答えを持つ製品です。
ドイツ、日本、ベトナム。異なる文化と技術的背景から生まれたモデルを通じて、現在のヘッドフォン・イヤホンの世界がどこまで広がっているのかを、ぜひ感じていただきたいと思います。
ドイツ・ベルリンから届く、二つの平面磁界型
ドイツ・ベルリンからは、CAMERTONとArcTec Berlinという二つのブランドを取り扱います。
CAMERTONのBinom-ERは、独自開発の平面駆動ドライバーを核に、振動板、磁気回路、筐体、ヘッドバンドに至るまで、一つの思想でまとめ上げられたフラッグシップモデルです。細部を過度に強調するのではなく、低域から高域までが自然につながり、一つの音楽として立ち上がることを重視しています。

音を細かく分解して聴かせるというより、演奏全体の流れや空間の連続性を保ちながら、必要な情報が無理なく見えてくる。ヘッドフォンでありながら、良質なフルレンジスピーカーを近い距離で聴いているような一体感を目指した製品です。
一方、ArcTec BerlinのAB 92は、音を耳元に閉じ込めるのではなく、空間へ自然に解き放つことを重視しています。完全に開放された独自のAirBorne構造と平面磁界型ドライバーを組み合わせ、一般的なヘッドフォンで感じることのある閉塞感や、音像が頭の内側に集まる感覚を抑えています。

開発を手がけたのは、長年にわたりスタジオモニターと音響変換技術に携わってきたクラウス・ハインツ氏です。録音を正確に捉える冷静さと、音楽を長時間楽しめる自然さ。その両方を求めた設計は、派手な演出ではなく、響きや音の消え際まで丁寧に聴きたい方にとって、興味深い選択肢となるでしょう。
日本の設計力を形にしたKuraDa
日本からは、静岡を拠点とするKuraDaのKD-Q1を取り扱います。
KD-Q1は、開放型ダイナミックヘッドフォンという親しみやすい方式を採用しながら、内部の空間と空気の流れを緻密に設計したモデルです。バッフルを囲む複数のチャンバーと音響フィルターによって、低域の不要な膨らみを抑え、中高域のつながりや定位を整えています。

特徴的なのは、最新の3Dプリント技術を単なる外観上の演出ではなく、複雑な内部構造を実現するために用いていることです。加工技術ありきではなく、求める音響構造を形にするために、最適な製造方法を選ぶ。その姿勢には、日本のものづくりらしい実直さが感じられます。
音の輪郭を過度に鋭くせず、ピアノの減衰、弦楽器の質感、ヴォーカルの存在感を自然に描き出すKD-Q1は、刺激の強さよりも、長く音楽を聴き続けられるバランスを重視する方に向いた一台です。
ベトナム発、MEMSが切り開くイヤホンの新領域
イヤホンでは、ベトナム・ホーチミンで創業したSoranikの製品を新たに取り扱います。
Soranikが現在力を注いでいるのが、半導体製造技術を応用したMEMSスピーカーです。従来のコイルと磁石を中心とするドライバーとは異なり、シリコン基板上に形成された微細な振動構造を高速に動かすことで、優れた応答性と細部の再現力を引き出します。
MEMS-3は、MEMSと二つのダイナミックドライバーを組み合わせ、それぞれの長所を生かしたハイブリッド構成を採用しています。MEMSによる繊細で素早い表現に、ダイナミックドライバーの厚みと低域の量感を重ね、さらに開放型構造によって、イヤホンらしからぬ広がりを追求しています。

上位モデルのMEMS-3S 2025では、異なる特性を持つ二種類のMEMSを重ね合わせ、二基のダイナミックドライバーと組み合わせた、さらに意欲的な構成へ発展しています。小さな筐体の中に新しい変換技術と複雑な音響設計を収めるSoranikの製品は、イヤホンの可能性がまだ完成されたものではないことを実感させてくれます。

国が違えば、音への答えも変わる
今回のラインアップに共通しているのは、高価な素材や新しい技術を採用すること自体を目的としていない点です。
ドライバーの動き、空気の流れ、筐体の共振、耳との距離、そして装着した状態で生まれる空間。それらをどのように整えれば、音楽がより自然に、より深く伝わるのか。各ブランドは、それぞれ異なる方法でこの課題に向き合っています。
ベルリンの合理的で先鋭的な設計、日本の緻密な構造設計、ベトナムの新技術への大胆な挑戦。同じ録音を聴いても、製品が変われば、音楽の見え方や感じ方は大きく変わります。それは単なる音色の違いではなく、設計者が音楽のどこを大切にしているかという、価値観の違いでもあります。
ヘッドフォンやイヤホンを選ぶ際、価格やスペックの比較だけでは見えてこないものがあります。解像度、音場、低域の量感といった言葉だけでなく、「どのような音楽の聴き方をしたいのか」「どのような時間を過ごしたいのか」という視点から選ぶことで、自分に合った一台が見つかりやすくなります。
新しく加わった各国のモデルが、これまでとは違う音楽の表情に出会うきっかけになれば幸いです。ぜひ、それぞれの製品に込められた設計思想と個性をご覧ください。








