アンプの違いを各種メーカーで比較

アンプの違いを各種メーカーで比較

当店で扱っているオーディオメーカーです。どちらのアンプの音も定評があり人気のあるメーカーです。


それぞれ佇まいも違い、シャシー造りから内部回路と特徴があります。再生される音にもそれぞれのメーカーの特徴が出ていますので、今回は各メーカーの特徴や音の違いを個人の視点から語ってみたいと思います。


バクーンプロダクツ


バクーンプロダクツの商品ページはこちら


https://www.exclusive-audio.jp/shop/products/list.php?category_id=17


今回挙げるメーカーの中で唯一真空管を使っていません。最近MJなどのオーディオ誌で絶賛されている熊本に本社を置くオーディオメーカーです。ホームオーディオ以外にもプロ用のアンプやマイクも作っています。


特徴はなんと言ってもバクーンプロダクツ独自開発のSATRI(サトリ)回路です。歪みのほとんど無い(EX仕様0.05% / UL仕様0.007%)、超高精度の増幅を可能にししています。


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収録音源を忠実に再現する事を目指して作られたSATRI-ICは、歪みのほとんど無い(歪率0.05%~0.007%)、超高精度の増幅を可能にしています。天才肌の開発者永井氏の下、現在ではシリーズが第4世代まで進化しています。MK4シリーズからは、新たに開発されたHIBIKI回路も追加されて一段と高精細高精度の音に。高域から低域まで一点の曇りの無い透明感は高いSNよるところ、とても静かな背景により際立ちます。シャープで輪郭がハッキリしているので、聴き取れるか取れないかの様な繊細で微かな背景音や情感のあるヴォーカルの僅かな唇の動きも逃さず伝えてくれます。全く色付けや飾りが無く、高域や低域への強調もない再生音は、録音現場の雰囲気や情景をそのまま再現してくれます。ただし、あくまでも音源に忠実であるため、重低音など低域に重点を置いているオーナーにはもうちょっと低域が欲しいと思うかも知れません。



そしてバクーンプロダクツといえば、SATRI回路と共に他社とは一線を画す電流出力を使ったSATRI-LINK(サトリ・リンク)接続です。バクーン製機器をSATRI-LINK接続する事で、通常の接続方法(電圧接続)よりも雑音がほとんど無い、直流の大電流による遥かに情報量が多い音楽信号を運ぶ事が可能になります。SATRI回路と相まった欠落の無い圧倒的な情報量と歪みもノイズもほとんど無い音楽信号はバクーン・サウンドの真骨頂です。


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その一方で、親和性が高く、他社製のアンプとのコンビネーションもクセがない分難なくこなします。真空管アンプもCAPシリーズ以外であれば、使用する真空管アンプの特徴を殺す事なく楽しむことが出来る懐の広さがあります。


外観は好みの分かれるところです。黒いボディにオレンジのロゴとノブのコントラストは、実は大多数のスピーカーや木製ラック等の配色と同系色で親和性が高く違和感なく溶け込みます。


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オレンジのノブはベークライトという高級素材です。シャシーはアルミを採用しています。理由は鉄だと音が歪み、それを避けるため銅を使ったり別の素材で遮蔽すると重量もコストも高くなるのために使っていません。またアルミは、軽量でコンパクト化にも貢献しているので設置の苦労がないのは大きなメリットかも知れません。トランスは漏れ磁束が少ないRコアやトロイダルコアを使っている為、磁気の影響は気にするレベルではありません。またスピーカーも問題ありません。ただしプレーヤーなどの使っている駆動系の磁力は強いので、若干距離を置くか、重ねて設置する場合はプリアンプを間に挟むなど1台分空けて多少距離をおいた方が無難でしょう。


アストロ電子企画


アストロ電子企画の商品ページはこちら


https://www.exclusive-audio.jp/shop/products/list.php?category_id=18


オーディオ誌で、その堅牢なシャシー作りと音で高い評価を受けている真空管アンプを中心としたオーディオ機器を製造しているメーカーです。


アストロ電子企画の特徴は、なんと言っても、堅牢なシャシー作り。上位機種は2mm又は3mm厚の折り曲げ加工したステンレス製(中堅機種ではジュラルミン製)を採用、しかも結構高いステンレスのカトラリーで使っている物よりも純度の高いハイグレードで、手触りの感触が身近な食器を軽く上回ります。このシャシーだけでもかなりの重量です。内側はステンレスまたは無酸素銅で更なる補強がなされています。継目もリベットもほとんど無い鏡面に仕上げられた外観はソリッドで冷たい感じでありながら、完成度の高さを窺わせます。暖色系のライトの下での真空管の穏やかな灯の映り込む姿は、とても雰囲気のある佇まいになります。


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全モデル共通で前面パネルには10mmの極厚アルミ板で筐体全体の締めの補強とアストロ電子製品の意匠としています。バクーンプロダクツが選ばなかった重くガッツリ強化されたシャシーにより、振動と雑音を見事にシャットアウトしています。また真空管の取付口は放熱と振動対策がされた二重構造になっています。パワーアンプは左右独立したボリュームが付いているので、ちょっとしたバランス調整に役立ちますし、プリアンプ無しでもレコード以外であれば音楽を聴くことが可能です。


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トランスは橋本電機製を中心にアストロ電子が指定した特注品を使用し、コンデンサーやボリュームも厳選した物を全て手配線で組み上げています。ほぼ全ての組み上げ作業をベテランの一人のアンプ職人が行っていますので、使用素材は違いますが値段の大小に拘らず製品のクォリティは同じなので廉価モデルはかなりお買い得かも知れません。よく考えられ、練り上げられたシャシーと優秀なトランス、大容量のコンデンサーから創り上げられるサウンドは、真空管アンプのイメージにある様な暖かさや柔らかさとは無縁。透き通るように透明感が高く明るい音。音像もしっかりしていて立体的、中低域も豊かで余裕のある音です。中上位機種のプリアンプは高域の一段の伸びと明確な輪郭と豊かな音楽表現を全域に渡って一段と高めてくれます。基本はオリジナル音源に忠実である事からシャープで色付けのない音は真空管アンプとしては明快でクールな音に感じるかも知れませんが、音源をクリアで力強く細部まで表現豊かに再現してくれます。



アストロ電子企画は、採用する真空管は、好んで増幅管には12AU7、12AX7、出力管にはKT88系、300Bを採用しているのですが、理由は音の良さもそうなのですが、互換性もあり広く一般的に出回っていて入手し易いからです。ご存知のように真空管は同じ型番でもメーカーが違えば音も違います、オーナーになった人の嗜好や互換性のある真空管を気軽に付け替えて音楽を楽しめるようにと敢えて入手し易い玉を選んでいます。そのため、一部のハイエンド系を除いて全てバイアス調整せずに差し替えて使用できます。山本音響工芸のようになかなか手に入らない真空管を敢えて使ってその音を楽しむアンプとはちょっと違うアプローチです。


山本音響工芸


山本音響工芸の商品ページはこちら


https://www.exclusive-audio.jp/shop/products/list.php?category_id=13


様々なオーディオ用アクセサリーを展開している山本音響工芸。その山本音響のアンプは優れた木工技術を活かして造られた天然の木目が美しいウッドと真鍮によるコンビネーションの外観は上記2社とは違う温もりのある印象。表面を滑らかに、曲線を美しく処理された木製シャシーは、人が小さい頃から身近に親しんで来た木工という物のせいか、山本音響のアンプの存在感を高め、見た目の満足度がかなり高いです。木の魅力というのは不思議なもので、どんな木製製品にも人は必ず触ってその感触を試したくなりますね。


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響きの良さを謳う桜材や黒檀の使用は、適度な硬さと柔軟性による制振効果も見込めるはずで、音質に貢献しています。構成部品でも山本音響のオリジナル製品や独自加工したコンデンサーなど、国内外を問わず厳選した部品を採用する事で信頼性と音質向上を図っています。また非磁性体の真鍮のカバーやテフロン材での絶縁対策なども抜け目なく施しています。


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山本音響工芸は、使用する真空管にウェスタン・エレクトロニックやエミッション・ラボといった中々手に入らない特定のヴィンテージ管を採用することで、その真空管の魅力を最大限活かした音楽を楽しむ言わば専用のアンプを作り出しています。憧れのヴィンテージ管で思う存分音楽を堪能したい人向けともいえます。アストロ電子企画が手に入り易い真空管を使う事でオーナーの好みや自由度を高めているのとはまた別の楽しみ方です。


山本音響工芸の音の印象は、木製のソフトな見た目の通り、上記2メーカーに比べるとソフトで優しく、何となく真空管アンプらしい暖かみが感じられます。真空管らしさを残しているとも言えます。使用するヴィンテージ管の個性をちゃんと導き出しつつ、いい意味で音に味付けをしている感じです。パワーアンプは全てシングルタイプです。ソフトさの中にも輪郭がちゃんとあり、曖昧さはありません。シングルらしく繊細な音もしっかり表現しています。高中域を中心に豊かな音楽表現ですが、低域は少し大人しめです。シングルアンプですので、出力は数ワットしかりません。音を存分に楽しみたい方は能率の高いスピーカーが理想ですね。



吉柴音響産業


吉柴音響の商品ページはこちら


https://www.exclusive-audio.jp/shop/products/list.php?category_id=42


毎年秋葉原で開催されている真空管オーディオ・フェアの実行委員長をやられている吉柴氏が代表の吉柴音響です。今回の4社の中で一番個性的かも知れません。吉柴音響のアンプには、いわゆるパッと見てわかるブランドデザイン(意匠)がなく統一感が余りありません。共通点はノスタルジー、レトロ感です。吉柴氏がイメージして創り出されるアンプは、それぞれ異なる個性的なデザインをしています。吉柴氏の技術職人というよりアーティストのような気質がデザインに色濃く反映されています。 


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それは音作りにも同じで、現代的なオリジナル音源を忠実に再現するというメーカーとはまるで考え方が違い、真空管アンプの音って昭和の時代はこうだったでしょう。昔憧れたアンプの音は今の時代よりもっと良かった。やっぱり低位域は気持ち良く出したい、と言いた感じで、音楽鑑賞をいかに気持ち良く聴くのか、どうしたら情感たっぷりに浸れるのかを常に考え日夜アンプの音質向上のための研究に励んでいます。特にシングルアンプであろうとモノラルアンプだろうとしっかり中低域が出て聴いていて気持ち良く情感に訴えかけてくる音は出色です。その音を作り出している肝は吉柴音響オリジナルのトランスです。トライアルアンドエラーで辿り着いた時間も手間も掛かる手巻きのトランスです。そして、理想の音を創り出すための経験と常日頃貪欲に研究している最新鋭の技術です。



吉柴音響はヨーロッパやアメリカのアンプの音を強く意識しています。根本的に老舗の欧米の真空管アンプメーカーの音の鳴り方は日本の真空管アンプとは鳴り方が違うと感じていて、それを超える音を作り出すために昔のウェスタンなどのアンプを配線図や部材から徹底的に調べて、比較、研究して、吉柴音響の音に活かしています。


四社四様の音への考え方とアプローチです。


 

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